「女房が出掛けようとすると、(注)ワシも行くと言うもんやから、すっかり嫌がられてるよ」 こういう定年亭主を「恐怖のワシも族」と言うのだそうだが、今やさぞかし①「ワシも族」がはびこっていることだろうと思いきや、ニッセイ基礎研究所の「定年前?定年後」という本にこんな調査結果が収められていた。 数字は省くが、仕事に生きがいを持っていた人のほうが、そうでない人より定年後の社会活動にもずっと生きがいを感じているという内容で、要するに、会社人間ほど定年後も意欲的という分析だ。 彼らの社会活動の生きがいは、交友関係の広がりによって生まれているようで、植木職人になったり、NPOやボランティア、地域活動に携わっている元銀行員をはじめ、多種多様なケースがいろいろ紹介されている。 以前、あれは有力銀行の支店長であったか、定年退職した途端、年賀状も激減するなど一変した状況に喪失感を覚え、自ら命を絶ったという話を聞いたことがある。 これなどは極端なケースだとしても、<「会社」のために頑張る価値観は、「社会」のために頑張る価値観と合致するかもしれない>と分析される先の調査結果などは、会社人間の「その後」に②新しい視点をもたらすものだろう。 (近藤勝重「しあわせのトンボ:会社人間の『その後』」 2007年11月14日付毎日新聞夕刊による) (注)ワシ:わたし 50 筆者の友人が、<「自分」―「仕事」=?>という設問に「ゼロや」と答えたそうだが、それはどのような意味か。
1 その友人はこれまで一つの仕事しかしてこなかったので、ほかの仕事は全然できないという意味 2 その友人は仕事一筋に生きてきたので、これからも家族と一緒に何かしようとは考えていないという意味 3 その友人は生活のすべてを仕事中心に送ってきたので、定年後は何もすることがないという意味 4 その友人は定年後に生きがいを見つけ、会社生活で得たものはゼロだったと感じているという意味 51 ①「ワシも族」とは、どのような人たちのことか。
1 奥さんが何かしようとすると、なんでも一緒にしたがる定年後の夫 2 奥さんばかりでなく、家族の皆からも嫌がられている定年後の父親 3 会社に出かけて行くよりも、家で奥さんと一緒にいるのが好きな夫 4 定年退職後、自ら進んで家事や社会活動に積極的に参加したがる夫 52 ②新しい視点をもたらすとは、どのようなことか。
1 退職後には多種多様な仕事の選択肢があるから明るいと感じること 2 会社中心に過ごしてきた人ほど、家での仕事に積極的になれること 3 会社人間ほど定年後の社会活動に意欲的であるととらえられること 4 定年後に生きがいがない人でも、社会的な活動には期待できること (2)技術者にとってレース車を開発するというのは、非常に魅力があるようなのだ。 それはそうだろう。市販車の開発であれば、コストのことや工場のことを考えなければいけないので、自分の考え出した創意工夫を必ずしも反映できるわけではない。いいモデルを出したからといって、営業の力が弱ければ売れるとは限らない(尐なくとも、多くの開発技術者はそう思って(注1)歯軋(はぎし)りをしているに違いない)。しかし、レース車であれば、ある程度、採算無視で色んなことにトライできる。何よりも、営業力とか他の要素に邪魔されることなく、①どんな大メーカーを相手にも対等に優务を争うことができるわけだ。 逆にいうと、言い訳のない世界でもある。敵よりコンマ1秒でも遅れをとれば負けるのだ。そして、それは、はっきりとその場で目に見える。(中略) 目標設定も単純だ。市販車開発なら、時にはアメリカと欧州(おうしゅう)の両市場で売れる車を作ってくれと営業から要求されたりする。そこでは技術的に妥協せざるを得ないが、レースは絶対的な速さだけを目指せばいいのだ。その代わり、自分の実力が今どうであれ、敵の車が75秒で(注2)サーキットを1周していれば、それより速いタイムで走る車をつくらないと意味がないのだ。②出来る、出来ないを論じる余地は全くない。また、お分かりのように、他チームの車の真似(まね)だけをしていれば、決して「最速」にはならないのも真実なのだ。 (田中詔一『ホンダの価値観―原点から守り続けるDNA』による) (注1) 歯軋(はぎし)りをする:ここでは、悔しく思う (注2) サーキット:レース用のコース 53 ①どんな大メーカーを相手にも対等に優务を争うことができるとあるが、なぜか。 1 創意工夫する力さえあれば売れる車がつくれるから 2 性能さえよければ採算のとれるレース車がつくれるから 3 営業力に邪魔されずに価格で勝負できる車がつくれるから
4 コストなどの要素に影響されずにレースで競える車がつくれるから 大连高端日语学校 54 ②出来る、出来ないとあるが、何が出来る、出来ないのか。 1 自社の最高タイムを次のレースで上回ること 2 技術的に妥協するしかない場合には妥協すること 3 ライバル社より尐しでも速く走れる車をつくること
4 アメリカや欧州(おうしゅう)のレースでいい成績をおさめること
55 この文章によると、レース車の開発は、技術者にとってなぜ魅力的なのか。 1 高い技術力が示せれば世界で認められるから 2 自社が持っている技術力の高さを証明できるから 3 明確な目標に向かって開発だけに集中できるから
4 開発者としての実力が大メーカーからも評価されるから
(3)わが国の文章の書き手として、想像?想像するという言葉をもっともよく使ったのは、おそらく柳田国男であろう。民衆に伝えられる生活の慣習、用具などに残る手がかりをつうじて、なつかしい(注1)古層(こそう)へとたどる民俗(みんぞく)学の、わが国での開拓者として、柳田にはこの言葉がきわめてたいせつなものであった。 柳田は、それと空想?空想するという言葉とを区別しようとした。その文章の執筆の時期や、あつかう対象、また語りかける相手のちがいにつれて、柳田の行なった空想?空想すると、想像?想像するの区別には、いかにもはっきりしている際と、そうでない場合がある。しかし後の場合も、空想?空想することをしだいに正確にしてゆけば、想像?想像するにいたるという、段階的なつながりにおいて――(注2)あい接し、境界がぼやけていることはあるにしても、その上辺と下辺では、ちがいがはっきりしている、という仕方で――使われている。 具体的な根拠のない、あるいはあってもあいまいなものにたって行なう古層(こそう)への心の動きを、空想?空想するとし、よりはっきりした根拠にたつ、しっかりした心の働きを、想像?想像するとして、柳田は使いわけているのである。そこで時には、やや、、とか、あきらかに、、、、、とかいう限定辞をかぶせねばならぬのではあるが、空想?空想するには、人間の心の働きとして、マイナス?消極的評価のしるし、、、がついており、想像?想像するは、プラス?積極的評価のしるしがついている。 (大江健三郎『新しい文学のために』による) (注1)古層(こそう):ここでは、古い時代 (注2)あい接し:互いに接し 56 柳田が使う「空想?空想する」と「想像?想像する」にはどのような関係があると筆者は考えているか。 1 互いに似ている部分があるが、「空想?空想する」から「想像?想像する」に変わることはない。 2 全く異なるものであり、「空想?空想する」と「想像?想像する」との境界ははっきりしている。 3 両極も境もぼやけていて、「空想?空想する」と「想像?想像する」との境界ははっきりしない。 4 両極は明確だが境はぼやけていて、「空想?空想する」から「想像?想像する」に変わることがある。 57 柳田が「空想?空想する」という言葉を使うのはどのようなときだと筆者は考えているか。 1 はっきりしないものをもとに古い時代を考えるとき 2 はっきりしたものを根拠に古い時代をたどるとき 3 現代に残されている手がかりから過去をたどるとき 4 過去の出来事を手がかりに現代を考えるとき 58 柳田が「想像?想像する」という言葉を使うのはどのようなときだと筆者は考えているか。 1 古い時代の民衆の心を伝えるとき
2 人間の心の働きを積極的に評価するとき 3 あいまいなイメージをはっきりさせるとき 4 明確な根拠にもとづく心の働きを表すとき
問題10 次の文章を読んで、後の問いに対する答えとして最もよいものを、1?2?3?4から一つ選びなさい。 理系の文章は明確な目的を持っている場合が多いので、その目的に応じて読者は文章を読む。このため、目的に合致した文章は満足感を読者に与える。たとえば、「東京都の交通渋滞に関する調査報告書」はそれを知りたい人が読み、その内容が過不足なく記述されていれば100点の評価となる。調査内容が不十分であれば評価は下がり、満足感は尐なくなる。 しかし、もし著者と読者のあいだで、その文章を媒体として記述されていること以上の事柄が発見できれば、読者にとって最高の満足感となる。言い換えると、読者が新しい知識を発見する喜びを支援する、あるいはそのきっかけとなる文章こそが、100点以上の評価となる。それは著者と読者の①シナジー効果(二つのものから、それらの合計以上のものが生み出される効果)であり、それをもたらすには、著者は常に読者を意識し、読者とともに問題の解決にあたるという姿勢を持つことで文章に磨きがかかる。 いくら仕事や理系の文章だからといって「AはBだ、覚えておけ」という姿勢の文章では読者の満足感は尐ない。むしろ、読者は自分の無知を知り、自己嫌悪に陥り、一方、著者への親近感はなくなり、読む気がしなくなる。文章の目的を達成するために大事なことは、読者が最後まで読んでくれることである。いくら素晴らしい内容が書かれていても、読者が読む気のしない文章は目的を果たすことができない。 学生のレポートで、②それが一番よくわかる。なにしろ提出数が多いので、すべてを完全に理解しようとして読むことは不可能である。結局、最初の数行を読んで、あるいは全体を見渡して、読む気が起こるかどうかが評価に大いに影響する。これは、上司に提出する企画書や、(注1)コンペに応募する提案書などでもまったく同じである。 その意味で、人の読む気を誘う文章であるかどうかは重要である。では、読む気とは何か。それこそがシナジー効果である。 (中略) 読者が自力で新しいことを発見することの支援はなかなか難しい。むしろ、自分の思考過程を深く分析し、読者と一緒に考えようという姿勢を持つことが最も重要である。読者に与える完全な解答はなくても、解答に向かうひたむきな姿勢を示すことができれば良いのだということである。言い換えれば、ごまかしがなく、技巧を(注2)弄(もてあそ)ばず、大げさにいえば著者の人生観を示すことで、真実に迫ろうという書き手の気持ちが読者に通じるのである。仕事の文章や理系の文章は、一般にはこういう行間の意味は不要と考えられているが、それでは(注3)無味乾燥(むみかんそう)の教科書文章となり、人の心に届かない。いくら人の③脳に届いても、心に届かないものは読む気がしなくなり、結局、読者の脳にも届かなくなる。 (三木光範『理系発想の文章術』による) (注1)コンペ:ここでは、仕事の依頼先を選ぶために企画を競争させるもの (注2)弄(もてあそ)ぶ:ここでは、必要でないのにむやみに使う (注3)無味乾燥(むみかんそう)の:味わいがなくてつまらない 59 ①シナジー効果とあるが、読者にとってのシナジー効果とはどのようなものか。 1 記述されている内容から、求めていた以上のことが得られる。 2 著者が伝えようとしている事柄を理解し、知識を増やす。 3 読むことを通して事実を知り、不十分な点を自覚する。 4 文章から足りない知識を補い、疑問を解消する。
60 ②それが一番よくわかるとあるが、何が一番よくわかるのか。 1 読み手に満足感を与えるのは難しいということ 2 素晴らしい内容でなければ読んでもらえないこと
3 読む気がしないものは終わりまで読んでもらえないこと 4 読んですべてを理解してもらうことは不可能だということ
61 ③脳に届いても、心に届かないとはどういうことか。 大连高端日语学校 1 技巧には感心しても、内容には共感できない。
2 行間の意味は理解できても、内容には感動できない。 3 書き手の姿勢は理解できても、気迫までは感じられない。 4 内容は理解できても、書き手の気持ちは伝わってこない。
62 理系の文章の書き手はどのような姿勢を持つべきだと筆者は述べているか。 1 読者の読む目的を分析し、読者に過不足のない情報を与えようとする。
2 読者を意識しつつ、真摯(しんし)に解答を求めてその気持ちを伝えようとする。 3 読者に満足感を与えるよう、妥協せずに完全な解答を提供しようとする。 4 読者の読む気を最後まで誘うよう、読者の思考過程を深く分析しようとする。 問題11 次のAとBの文章を読んで、後の問いに対する答えとして最もよいものを1?2?3?4から一つ選びなさい。 A 生態系(注1)保全(ほぜん)では、そこに(注2)生息する生物のことを考慮するが、生態系を構成するすべての生物を等しく扱うことはできない。なぜなら、一部の生物を守ろうとすると、必ず不利益を被る生物が生じるからである。すなわち、われわれ人間が何をしても、それによって利益を得る生物と不利益を受けるものが生じることになる。そうなると、生態系を保全(ほぜん)する目的で、何らかの活動をするということは、一部の生物種に利益を与えるということになる。 (中略) 唯一われわれが言えることは、われわれが人類であるから、「地球生態系は人類が健全に生きていくためにある」ということである。すなわち、「生態系は人類のため」なのである。言い換えれば、人類に利益を与えてくれる生態系を保全(ほぜん)すべきなのである。 (花里孝幸『自然はそんなにヤワじやない―誤解だらけの生態系』による) B (注3)保全(ほぜん)生物学の核となる概念である生物多様性は種の存続によって維持される。したがって、保ほ全ぜん生物学では、希尐種や減尐過程にある個体群の保ほ全ぜんに関する知識と方法が一つの重要な課題である。(中略) しかし、個別の種をそれぞれ保護することは非常に困難である。一つの生態系をとっても、微生物から植物、昆虫、哺乳(ほにゅう)動物など多くの種が生存しているが、それらの全すべての生態を把握して保護することは不可能に近い。さらに、未分類の種や種レベル以下の遺伝的多様性は、個別の種を保護する方法では逆に保護されなくなってしまう恐れがある。そこで、多様な生物の相互関係を含む自然をそのまま保全(ほぜん)することが重要になってくる。つまり、生態系を保ほ全ぜんすることで、そこに含まれる全すべての生物を保護するという考え方である。 (高柳敦『琵琶湖研究所所報』1996年第15号による) 大连高端日语学校 (注1)保全(ほぜん):ここでは、守ること (注2)生息する:生きる (注3)保全(ほぜん)生物学:生態学の研究分野のひとつ 63 生態系を構成する生物の保護について、AとBの文章で共通して述べられていることは何か。 1 多様な生物を含む自然全体を保護することが重要である。
2 多_______様な生物種を一様に保護していくことは非常に難しい。 3 生物種を分類して保護することは生物間の差別につながる。 4 人類に利益を与える生物を保護するべきである。
64 保護すべき対象についてAとBはどのように考えているか。
1 Aは地球生態系を、Bは遺伝的多様性のある種を保護すべきだと考えている。 2 Aは生態系の全生物を、Bは希尐価値のある生物を保護すべきだと考えている。 3 Aは人類に利益を与える生物種を、Bは個別の種を保護すべきだと考えている。 4 Aは人類のためになる生態系を、Bは生態系全体を保護すべきだと考えている。 問題12 次の文章を読んで、後の問いに対する答えとして最もよいものを、1?2?3?4から一つ選びなさい。 うちの犬は頭がよくないけれどむやみに吠(ほ)えない。これは犬種の性格である。もうひとつ、絶対に嚙(か)みつかない。これは訓練士に仕込まれた成果である。大きな犬なので幼児に嚙(か)みついたら事件になってしまう。 訓練士は二十代の女性でスクーターに乗ってやってきた。訓練時間は週に4回、各30分である。半年近く経っても訓練が終わらないので、いつになったら卒業できるんですか、と訊 たずねた。家庭内での序列がはっきりしたら、と説明する。序列ねえ、どういうことかな、とさらに質問すると、①お宅の坊ちゃんがまだ……。 十年前なので息子は小学生である。体格的にも犬と息子に差がない。うちの犬はまず僕、つぎに妻と気の強い娘に(注1)降参したのだ。だが息子は軟体動物のようにふにゃらふにゃらとしている。寝てばかりいる。起きてもあくびばかりしている。両者は最下位争いを演じたまま(注2)四つに組んで決着がつかないらしい。 動物は序列に敏感なのだ。(中略) 女性の訓練士が説明した。犬をかわいがっているつもりで甘やかし、②腕をがぶりと嚙(か)みつかれた飼い主がいた。甘やかせばつけ上がるだけ、自分が主人と信じ込んで飼い主をなめた結果である。動物はつねに威嚇しながら序列を確認しているから、仲間同士は本気で喧嘩(けんか)をしない。相手が強い、とわかれば争わない。喧嘩(けんか)したら互いに傷つき、厳しい自然界では生き残れないから。