けれど、どうしても話せない。向こうから話し掛けてくれる人なら全然大丈夫だけど、静かな人、がボクサー? 果たして出来るんだろうか…。
あれこれ考えているうち、ボクシングジムへ人見知りする人などは、もう大変。僕は、全く喋れなくなってしまう。自分から話をする勇気が持てないのだ。でも、この人とはどうしても喋りたいって人には、頑張って喋ってみる。それで話が続くかどうかというと…大体失敗に終わる。本当に情けない。とにかく、恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。
こういう所は、まだ、少年です。
僕、堂本剛は、面倒草がり屋さんです。何処かって、此処には書き切れない程の面倒臭がり。 こういう所も、まだ、少年です。
僕、堂本剛は、ハンバーグ大好き人間です。ファミリーレストランなどで外食の時には、必ずと言って良い程、ハンバーグを注文。そして、ハンバーグを食べて日は、何故か寝るまでわくわくが続く。
こういう所も、まだ、少年です。
僕、堂本剛は、へたれです。へたれ中のへたれ。怖いものは、先ずは絶叫マシーンにお化け、それから、虫、高い場所、歯医者さん、病院、後は何かな…。もう、言い出せば切りがないくらい、ある。要するに、ドラマなどでの男っぽい役のイメージと僕を重ねてみるとショックを受けますよ、という事であります。正義感は物凄くあるけど、その正義感の裏は“へたれ剛”が潜んでおりますので、取り扱いに注意して下さい…。 こういう所も、まだ、少年です。
僕、堂本剛は、究極の寂しがり屋さんです。夜独りで寝るのが、とても寂しい。だけど、今は、ケンシロウが居るので大丈夫になった。毎日、腕枕をしてあげて、もう片方の手で、ぐっすり眠っているケンシロウの小さな手をそっと握って眠りに就く。あっ、そういえば、小学校の低学年まで、お母さんの手を握って寝てたっけ…。 やれやれ。こういう所も、やっぱり、どうしようもなく、まだまだ、少年です。
自分との闘い
近頃の僕は、筊肉痛に悩まされている。何故かというと、七月から始まるドラマに主演が決定し、その収録を日々こなしている毎日で、しかも、今回の役はボクサーの役だから。
ドラマの話を聞いた時は、本当に驚いた。僕
練習しに行く日が来てしまった。
ジムでは、たくさんの生徒さんがボクシングに夢中状態。僕も挨拶をして、早速練習に入った。先ずは軽く体操をして、ローブ(縄跳び)を3R(1R=三分間)跳んだ。たちまち、身体中から汗が溢れ出して。まるでコンサートの時のように汗が流れ出していた。三分間動いては一分間休み、そして、また三分間動く…。これの繰り返しだ。ロープの後は、ステップ。右足の爪先をピンと立て、腰を入れて前後左右に動く運動だ。それが終わったら、ジャブとストレートの練習…。で、その日はやっと終了。
そして、二回目のトレーニング日。軽く前回のおさらいをして、ワンツー(ジャブ、ストレートのコンビネーション)。それをマスター出来たら、次はボディブロー、ブック、ガード、ウェービング、ダッキング、ミット打ち、スパーリング…。たくさんの事を一気に教わった。
ドラマの収録初日が迫っていた為、結局、三回しかジムへ通う事が出来なかったのだが、一生懸命教わった。僕が演じる役の設定がボクシングの上級クラスなので、とにかく必死で覚えた。なんとか形になったものの、筊肉作りも大変で、面倒臭がりなこの僕が、最近は毎晩、風呂に入る前に腕立て、腹筊、背筊の全てを三十回ずつ二セットこなしている。
毎日が大変で仕方ないが、良い作品を世に残す為に、今、僕は“自分との闘い”に明け暮れている。
毎日が覚える事だらけの生活は、苦しいような、楽しいような、不思議な日々だけど、今現在を悔いなく生きていたいって、心の中で、もう一人の自分が叫んでいる。
今日も、明日も、明後日も、そのまた次の日も…僕は“自分との闘い”を楽しむだろう。きっと。
な自分が、今日は、少しだけ大人に見えたんだ…。 ありのまま
ありのままって、難しい。
簡単そうに見えて、案外難しい。 嘘をつかんと生きて行きたい。なんでもかんでも素直に信じて生きて行きたい。たとえそう願
っていても、気ぃ付いたら嘘ついとったり、何かを疑うたりしてる。そんな自分が立っとる。生きて行く上でしゃあない事かも知らんけど、なんや、ぼの中にはゲンゴロウとお玉じゃくしが楽しそうに泳いでいたしました。僕にとっては、凄く居心地の良い場所でした。僕の実家は奈良なのですごっつう悲しい気持ちになる。
人間は、より住みやすい環境を創る為に、多くの犠牲や努力、時間や動力などを使うて進化して来た。
でも、最初の最初は、言葉もあらへん。すっぽんぽん。それは、まさしく、ありのままのような気分がする。ほな、恐竜時代にタイムリップしたら生きてけんのか?って云われたら、絶対に無理やと思うけど、そんなありのままが、僕には、物ごっつう美しく感じられる。
太古の原始時代の人達は、色んな感情を受けとめる力が、現代の人間よりも遥かに優れとったと、僕は思う。空の機嫌、花の想い、当然、人の気持ち…。
ありとあらゆる便利なもの、そして、便利が故に生まれる歪んだ世界が出来てしもた事で、人は、嘘や矛盾などを覚えたしもたんかも知らん。 …うぅん、なんや訳の解らん事ばっか、さっきから書いてんなあ。思い付くままに言葉を並べてしもた。せやけど、心の中で何かが溢れて来てな、ありのままって美しい事やなって思っただけの事やねん。すんません。たまにあんねん、自分の中で、ちょっとした事が短時間にどんどんどんどん膨らんでしまう時が。ふとした時、夜、寝る前とかな。
まあ、恐竜時代にも恐竜時代なりの、ええとこ悪いとこがあるやろし、今を生きとる僕は、文句云わんと生きてけばええんやろな。人は人、自分は自分。深く考えんと、僕は僕なりに今を一生懸命生きよう。
そうや、昔から変わらへん、ありのままって“今を一生懸命生きよう”という心なんかも知れへん。何時の時代も変わらへん、誰もが胸に持っとる宝物なんや。この宝物を人は失う事はあらへんやろう。うん、何時の時代も忘れる事はあらへんやろうなあ…。きっと、きっと…。ZZZZ…。 天気雨
僕は、つい最近、千葉県の市原市に行きました。ドラマのロケの為、長い時間、車に揺られながら行きました。周りには山々が広がっていて、田ん
が、市原市ののんびりとした空気が、何処か奈良に似た匂いを漂わせていたのです。電車も人も、風も空も…ゆっくり流れているようで、心が落ち着きました。
そのゆっくりとした時間の中で、ドラマの撮影は順調に進み、「今日は早く家に帰れるなあ」と皆が思っていた矢先の事です。空から、光とともに、雨が降り始めました。静かに静かに、優しい音色を立て、雨粒が落ちて来たのです。それもラスト一カットの所で、僕達が撮影している場所にだけ、降っているのです。まるで、周りの自然達が「もうちょっと遊ぼうよ」と云ってるかのように。
そうです、もっと自然達と仲良くなりたい。僕は、雨粒を顔に受けながら、きらきら光る空を見上げました。しばらくそんな風にして、自然達と手を繋ぎながら走り回る気分を味わったのです。
三十分くらい経った頃でしょうか、雨が止み、撮影は再び開始。それから、最後の「OK!」が出た一時間後には、もうすっかり夜が近付いていました。
帰り道、僕は車から顔を出して、流れ去る景色に心の中で呟いていました。 有難う。
短い時間だったけれど、一緒に遊んでくれて有難う。また逢える日までって。 自分の為にも
信号待ちの時、車の助手席で空を仰いでいました。 身体が吸い込まれそうになるくらい、美しい青色の天井に、つい見とれていたんです。一目惚れした女性が、自分の眼の前に立っている時に似たぼぉーっとした感じ。
「仕事あらへんかったら、ぶらぶら買い物行くのにぴったりな天気やのになあ」
そう思いながら、ふっと目線を下ろした時、僕の眼の前には、不思議な格好をした男の人と女の人が立っていました。僕の方を見て、手を振っています。
「誰やろ…?」
じっと眼を凝らしました。と、手を振ってい
たのは、なんと、草彅剛君と飯島直子さんじゃないですか?その事を確認した瞬間、背筊が何故だかブルッとしました。お二人は、丁度映画の撮影をされていたのです(不思議な格好=『メッセンジャー』の衣装でした)。慌てて「お早う御座居ます」と、挨拶をしました。
ほんだら、お次に、お二人は、僕の車の方に向かって走って来るじゃないですか!堂本剛、もはや、冷静でいられません。あたふたしながら、一緒させて戴いてます。『24時間テレビ』の時には、僕の体調があまり良くなかった為に、凄く心配を掛けてしまいました。CMの間に、何回も「大丈夫?」って言葉を掛けて貰いました。 堂本剛は、物ごっつう単純な男なので、綺麗なお姉さんから、そんな優しい言葉を掛けられると、照れながら笑っちゃうんです。「大丈夫ですよ」って答えながら、なんか、のべ~っとした顔になってしまうのです。果物とかも、たくさん戴お二人をお迎えしました。後輩の僕の為に、大先輩のお二人が、わざわざ道路を渡って言葉を掛けに来てくれたんです。 「元気してたか?」
ああ、その一言が、どれ程嬉しかったか。 お二人には、以前から本当にお世話になっています。思い出もいっぱいある。
僕がSMAPのツアーでバックをやらせて貰ってた時、どういう切っ掛けからか、草彅君と二人、ホテルの部屋で話をさせて貰った事がありました。
「剛は剛なんだから、周りに囚われず、剛らしさを出して仕事をすれば良いんだよ」 草彅君は、そんな風に云って、優しく笑ってくれました。テレビや雑誌でちょっと心に引っ掛かった言葉をメモしてるって話もしてくれました。例えば、東京タワーの高さは三三三メートルみたいな“ふーん、そうなんや~”という豆知識でも良い、そういう事でも知ってると、もしかしてバラエティー番組などで何かの取っ掛かりになるかも知れない。自分をアピール出来る切っ掛けになるかも知れない。いや、結局、なんにもならないかも知れないけど、それはそれで良い。決して損な事じゃないよ…。
やり方はなんだって良いと思う。自分らしさが出せれば良い。俺は俺らしさを出す。剛は剛らしさを大切に育てて行きなよ」
そんな風に云って貰ったから、今の堂本剛が在るんです。本当に本当に有難い事です。 草彅君は、お洒落で、優しくて、男っぽくて、笑顔が素敵な人。何時も逢う度に、そう感じます。僕の中のカッコ良い男ランキングのかなり上位に位置する男の人です。
飯島さんにも『24時間テレビ』の時に大変お世話になって、それからもたくさんの番組でご
きました。何より、皆も頑張ってんねんし、僕も頑張らなって気持ちをどんどん与えて下さいました。僕は、本当に幸せなやつですよね。そんな事をしみじみ考えてしまいました…。 話は戻りますが、信号が青になると、お二人は、大きな声で「頑張れよっ」という言葉を投げてくれました。堂本剛は、その言葉を上手くキャッチしました。
これからも、堂々と靴音を鳴らして歩いて行こうって、底知れぬパワーが湧いて来ました。 本当に本当に感謝です。何時も背中を押して戴いて恐縮です。
僕も、何時の日か、今日みたいな青空の下で、勇気、愛、夢、優しさ…色んなものがいっぱい詰まっている「頑張れよっ」という言葉を誰かに投げ掛けられたら良いな。 懐かしくて
七月十九日。夏のコンサートツアー初日?仙台公演の為、僕は仙台に居た。
翌日の公演の準備は着々と進んだが、時計を見上げると、深夜の十二時を回っていた。疲れた身体を車に乗せ、ホテルへと向かう。 途中、車内のカーテンが息苦しく感じられたので、カーテン全開、窓全開で、外の優しい風を受けとめた。その一瞬で、空気が変わった。窓の外の景色や匂いは、まるで奈良に帰ったような錯覚を起こさせた。池では、蛙達がゲコゲコ話し合いを始めている。僕は、その話し合いに耳を傾けた。聞いた所で、内容など全然解らない。そんな事は解っていたが、それでも良かった。 街灯もまばらな暗い道、二人の少年が自転車で走って来た。「よぉっ!」と声を投げようとしたが、前の座席では相方が夢心地だったので、黙って彼等の背中を見送った。
まだ何も知らない背中。汚い場面や心が痛む
景色など知らない背中…いや、もしかすると、もう既に知っているのかも知れないが…少年達の背中は、胸がきゅっと締め付けられるような切なさや苦しさ、そして何よりも、懐かしさを感じさせてくれた。
遊ぶ事が仕事だった頃は、自分達で新しい遊びをどんどん開発して、よく夕方まで遊んだものだ。僕は、家でゲームに夢中になるような子供ではなかったから、年中、外を走り回り、真っ黒だった。
あの頃の僕は、何処に居るんだろう。 都会で生きていると、昔の自分を探すのが難しい。たまに“顔”を出すのだけど、昔そのものの自分じゃない事が多い。そして、悲しくなる時がたくさんある。僕は、凄く不器用やから…。 こんな思いを抱いて仕事をしてる毎日の中で、僕は、ふっと生まれたあの頃の自分と、仙台の夜風とともに何時までも抱きしめ合った。 そう、あの時、僕は昔の自分に戻っていた。勿論、仕事も楽しい。だけど、僕にとって、こういう瞬間は宝物だ。
なんだか、少し切ない靴音でした…。 幸せ
広島でのコンサート前日、僕は『Gyu!』の中の“Gyu!バリーズ”ロケの為、大阪へ行った。目指した場所には、僕より一つ年上、二十一歳のカップルが待っていた。
彼等の話によると、彼女の父親が、二人の交際を認めてくれないという事だった。早速、彼女のお父さんにもお会いした。お父さんにしてみれば、まだ学生のうちは勉強に励みなさいとの事だったのだ が、堂本剛は見逃さなかった。お父さんの眼には、うっすらと涙が顔を出していた。 可愛い可愛い自分の娘。交際を認める事によって、その娘が遠くへ行ってしまうような気がしたのだろうか。お父さんの表情を見ていて、凄く 切なかったのを覚えている。
僕自身、結婚をして、娘が出来た時の事を考えると、お父さんと同じ気持ちになるに違いない…。門限かて、僕は娘に厳しいよ。彼とばかりじゃなく、たまには、お父さんである僕とも歩いて欲しい、遊んで欲しいとも思うやろな。そして、どんなに頑張って我慢しても、娘の結婚式には、やっぱり泣いてしまうんだ…。
ロケバスでの移動中、スタッフや出演者全員でも、そんな話になった。ずっと、そんな話ばかりしていた。
二十一歳になって、好きな人が傍に居たら、親に認めて貰いたい、親公認で付き合いたいっていう彼女達の気持ちも解ったし、お父さんの気持ちも痛い程解ったし…。しばらく、複雑な気持ちが続いた。
僕も、恋愛一つするのに、たくさんの“壁”を越えなくてはならないけど、この大阪のカップルにも、大きい大きい“壁”があるんやなあって思った。
恋愛って、難しいなあ…。 やれやれです。
でも、二人とも凄く幸せそうやし、仲良く手を繋いで、笑顔を絶やさずにいるんが本当に良いなあ…。
ついつい顔をニヤつかせて「羨ましいなあ」って、指をくわえしまった自分が居た。 二人には、もっともっと、たくさんの幸せとか夢とか、時には痛みまでも…見て欲しい。僕の分まで、いっぱいな。
幸せに笑ってる人を見てると、こっちまで幸せになれるし。
僕が幸せを感じたのと同じで、きっと、お父さんも、二人からたくさんの幸せを見付けられるよ。 「もう、お腹いっぱいやわ」ってくらいの、たくさんの幸せを…。
お父さん、その幸せを活力にして、お仕事頑張って下さい。
お二人も、これからもお幸せに。 そう願いながら、その夜、布団に潜った堂本剛でした…。 男を賭けた勝負
僕の中で、時間がゆっくりと動き始めた。 『君といた未来のために』『to Heart~初恋して死にたい』と、二本のドラマの撮影は、ほとんど連続して行われたので、ずっと余裕のない日々が続いていた。それが、この度、やっと一段落。 先ず、堂本剛は美容院へ行った。髪を切って、猿みたいになった。ウキキキッ。気分を変えて、ヘアスタイルもチェンジだ。
その後に向かったのは、とあるオープンカフェ。そこで軽く食事をした。
ピザを二つ頼んだ。店員さんは少し驚いたようだったが、仕方ない、かなりお腹が減っていたのです…。
ピザには炭酸の効いたジュース…と行きたい所だが、今日は中止。今日の剛は、何時もと違うのだ。大人な気分。それで、ちょいと背伸びをして、アイスカフェオレを注文した。夕暮れ時の陽射しと風を感じながら、そいつを飲む。 凄く幸せだった。 「気持ちええなあ」
ゆったりと自分の世界に浸っていたら、よしよし、ピザも運ばれて来た。お腹は準備OK。一気に食べてやる!…と行きたい所だが、そうは行かない。今日の剛は、一味違う剛で行くと決めたのだから。ピザを上品に口へ運び、上品に頬張る。我ながら完璧だと思った。
と、その瞬間、事件が発生した。
レタスや紫キャベツなど生野菜のサラダが上にのっかっている、お洒落にしてヘルツーなピザを頼んだのだが、突然の強風とともにキャベツが飛んで行ってしまったのだ。ああ、せっかくのキャベツが宙を舞っている。これは、かなりの計算ミスであった。綺麗に上品にピザを最後まで食べ切る筈だったのに、その計画は、強風の為、木っ端微塵に崩されてしまった。今日は大人っぽく決めるという、云わば男を賭けた勝負が、思わぬスペシャルゲストの強風にやられてしまったのである。
物凄く、悔しかった。
ボクシングで云う“1ROK負け”したような気持ちだった。
あちこちに飛び散ったキャベツを独り虚しく拾い上げては救助し、敗者?剛は、何時ものようにピザをむしゃむしゃとたいらげた。 「人間、無理したらあかんなあ」
そうぼやきながら、空を泳ぐ雲を、瞳に映したのだった。 六畳一間
「何してるかな」と思って友達に電話したら、「うちで野球観てますよ」との事。たまたま彼の家の近くに居たので「遊びに行っても良いですかね!」と聞いてみた。
「別に良いですけど。…でも、うち、アパートですよ」
「いや、別に良いですよ、行きますよ」 「もういっぺン確認しときますけど、アパートですよ、うちは」
「何を云ってるんですか、行きますよ」 彼が僕の家へ来た事は何回もあるけれど、僕が彼の家へ行くのは初めて。先ず近くの公園で待ち合わせをして、彼の案内で歩く事十分少々。外の階段をカタンカタンと音をさせながら上がると、そこが彼の城である。「どーぞ!」
開けて貰ったドアの裏には、某女性アイドルのポスターが貼ってあった。彼が油性ペンで書いたのだろう、“気を付けて行ってらっしゃい!”という吹き出し付き。ふむふむ。そして入って右にキッチンとお風呂とトイレ。正面の六畳間にはテレビやCDコンポ、奥にベッドがあって、壁は玩具がズラリ。更に部屋の隅っこにマンガや格闘技雑誌が積んであって、全体として正に“男の部屋”という感じだった。彼の性格が出てるというか、僕にとって、かなり気持ちの良い空間だった! すっかりリラックスしてしまった僕は、歩いている間に汗をかいたTシャツを脱いで上半身裸に。おまけに靴下まで脱いでしまった。「Tシャツ、ちょっと干して良いですか」なんて、窓をガラガラ開け、物干し竿に洗濯バサミでとめる僕を見て、彼は「それ、アイドルの姿じゃないですよ」と呆れ顔。「まあ、良いじゃないですか」僕はニコニコ、ジュースをぐびぐび。
続いて、目ざとく発見したギターでミスチルを熱唱する事にした。気持ち良く歌いながら、目線を自然に上に…と、あれ?“誰か”が眼に入った。以前、彼と僕が仕事をした時、一緒に撮った写真だった。おー、懐かしいなあ。飾ってくれた事も嬉しくてたまらない。まあ、どうせなら女のコに飾って貰えてる状況の方が望ましいんですけどね!?
僕達は、何時もよく語り合う。この日も、毎度御馴染み、恋愛論に熱くなった。「ああ、ときめきたい」と叫びつつ、最近、ときめき方を忘れてしまっている僕達には、一体、どうやったら彼女が出来るのか。家に居ると、タウンタウンとかのビデオを観て、ケンシロウと遊んで寝ちゃう...そんな生活をしている僕に出逢いのチャンスは訪れるのか。“可愛い女のコには、既に彼氏の居るケースが多い”という問題にはどう対処すべき