2010-简约版练习
『……さてR博士の発見にかかるアフロディテは……』
「そこじゃない,背丈を読むのだ」
Nは不審気な顔を向けた。
「高さをですか」
「そうだ,早く」
『像の高さは,二 一七メ-トル』
「それでいい。今度はオクスフォ-ド大学のR博士の著書を」
「やはり,高さだけを?」
「そうだ,早くしてくれ」
Nは次の一冊の頁を,窓のほとりで繰った。そして読みかけて,戦慄した。その数字が,あやしい呪文のように思われたのである。
『像の高さは,二 一七メ-トル……』
……R博士は目をとじてきいていた。ふいに瀕死の腹の底から笑いが湧いた。彼はふさがれた咽喉から,怖ろしい笑いを笑った。笑いは,はやくも屍臭にみちたような部屋の,黄ばんだ腐敗した空気をおしゆるがした。
N博士は駈け寄って,その手をとった。おちつかせようと試みながら,こう言った。
「博士,どうなすったのです。しっかりしてください」
「これが笑わずにいられるか,N博士」――彼はいいしれぬ嘲りと陶酔の表情をした。あいつら,ヨ-ロッパの一流の碩学どもは,私の著書からただ引用したにすぎんのだ。誰一人自分で測ってみる者はおらんのだ。
きいてくれ,N,儂のいまわの懺悔だ。半世紀の間,儂は学究をもってきこえていた。儂の研究はことごとく精確だった。儂はあいまいな独断をにくみ,ペイタリ流の甘い主観的な美学を憎んだ。儂の著書のどこをさがしても,一字の誤植でさえみつかるまい。……しかしこの儂が,一生に一度,自ら好んで過ちを犯したことがある。このアフロディテをごらん」
Nは薄明にひたされた,名状しがたい美神の横顔を目近に見た。
「……わかるだろう。儂がこれを発見したときの愕きが。儂はこの美が公共のものたるべきを知っていたし,儂がまたそうなるように努力するだろうことを知っていた。だが,わかるか,N,最初の一瞥以来,儂はこのアフロディテの魅惑の虜になった。儂は彼女と個人的な秘密を頒ちたかった。どんな些細な秘密であれ,儂とアフロディテ以外,何ものも知らない秘密を頒ちたかった……
……儂は咄嗟にたくらみをめぐらした。手ずからその高さを測った。像の高さは二 一四メ-トルあった。しかるに儂は,世界の学界へあまねく,三センチ多い尺数を公表したのだ。……そうだ,測ってみるがいい。そんな疑わしそうな顔をするなら,測ってみるがいい」
R博士の顔は汗に濡れて,狂おしく紅潮した。
「机の上に物差がある。細い三メ-トル弱の板がある。定規がある。像の足から直角のところへその板を立て,頭の頂点から地面に水平に引いた線が,その板にまじわるところにしるしをつける。それだけでいい。さあ,測ってみるがいい,早く……」
N博士は言われたとおりにした。
瀕死の者は,枕から頭を浮かせ,あえぎながら,この作業を見守った。
「測れたな」
R博士は言った。
「はい」
「何メ-トルだ」
N博士は物差を丹念に見た。