○古語 雤 降る| な り。 ○語源 |音(ね)|あり。 雤が降る|音がある?する。
Ⅴ.伝聞過去の「けり」
○古語 昔、男 あり|け り。 ○語源 |き | あり。
昔、男がい |たという話がある。
Ⅵ.断定の「なり」
○古語 我は人間| な り。 ○語源 |に|あり。 私は人間|で ある。
Ⅶ.断定の「たり」
○古語 男| た る|者。(断定) ○語源 |と |あ る|者。 男|として存在する|者。
$34 終止形が「り」で終わる卖語はラ変である
終止形が「り」で終わる言葉についてまとめてみましょう。
①「あり」「をり」「はべり」などのラ変動詞 ②「静かなり」などの形容動詞
③「けり」「たり(存続?完了)」「り」「めり」「なり(断定)」「たり(断定)」「なり(伝聞推定)」などのラ変助動詞
④形容詞のラ変型活用も、实は、理論的には「り」で終わる終止形があるのです。現に「多かり」は形容詞なのに例外的に「り」で終わる終止形を持っています。
これが、終止形が「り」で終わる卖語のすべてです。これらはすべて「あり」を語源に持っている、だからこそラ変に活用するのです。
$35 ナ行変格活用は「死ぬ」「往ぬ」「ぬ」の三語
「死ぬ」(ナ行変格)の活用表
古語 現代語訳
未 老兵は |死な |ず 老兵は |死な |ない 用 老兵は |死に |たり 老兵は |死ん |た 終 老兵も |死ぬ |。 老兵も |死ぬ |。 体 老兵の |死ぬる|時 老兵が |死ぬ |時 已 老兵は |死ぬれ|ば 老兵は |死んだ|ので 命 老兵よ、|死ね |。 老兵よ、|死ぬ |。
ナ変動詞は「死ぬ」「往(い)ぬ」(「去ぬ」とも書く)の二語、それに完了の助動詞「ぬ」を加えてナ変は三語と覚えてください。「死ぬ」も「ぬ」も、語源は「往ぬ」らしいですが、それより、次の点に注意してください。
○完了の助動詞「ぬ」の訳はもちろん「…てしまう?てしまった?た」。
○「死ぬ」の訳は「死ぬ」ではなく、「死んでしまう?死んでしまった」の方が多い。 ○「往ぬ」の訳は「行く」ではなく、「行ってしまう?行ってしまった」の方が多い。
$36 カ行変格活用の終止形は「来(く)」
「来(く)」(カ行変格)の活用表
古語 現代語訳
未 人は |こ |ず 人は |来 |ない 用 人 |き |たり 人が |来 |た 終 人 |く |。 人が |来る|。 体 人の |くる |時 人が |来る|時
已 人は |くれ |ども 人は |来た|けれども 命 こちへ|こ(よ)|。 こっちへ|来い|。
カ変については、終止形が「来る」ではなく、「来(く)」である点だけに注意してください。「人が来る。」を古文で言うと、「人来(ひとく)。」です。その他の活用形は現代語と同じです。
「詣で来(まうでく)」「出で来(いでく)」「訪ね来(たづねく)」などの複合動詞もカ変です。
$37 「来たる」は四段活用の動詞であることが多い
カ変に関連して、もう一つ重要なこと。
① 来たる |何月何日、石原慎太郎都知事| |来たる 。
これからやって来る|何月何日、石原新太郎都知事|が|やって来る。
②春 過ぎて 夏| | 来たる | らし 白妙の衣ほしたり天の香具山(万葉集?持統天皇) 春が過ぎて、夏|が|やって来る|ことが分かる。…
この「たる」は存続?完了の助動詞ではありません。なぜなら、「今、来ている何月何日、石原新太郎都知事が、今、来ている。」と訳したのではおかしいでしょう。①②とも、「来たる」は一語の四段活用の動詞で、「やって来る」という意味です。語源は「来至る」だと言われています。「来たる」という四段活用の動詞があることを覚えてください。ただし、まれに、カ変「来」+完了「たり」の場合がありますが、これは文脈で分かります。
$38 終止形が一音節の動詞のすべて
「す」…サ変
「来(く)」…カ変
「得(う)」…ア行下二段 「経(ふ)」…ハ行下二段 「寝(ぬ)」…ナ行下二段
学問的には他にもありますが、この五つで十分。また、この五つはとても重要です。
$39 余談 活用形の名称の由来
これは試験には出ませんが、大切な知識を含んでいます。活用形の名前は、どうして付けられたか。
①人々に月の歌を詠ます→「す」に連なるから、連す形?使役形。下二段などは「さす」が付くから、「連さす形」。
②死なばもろとも→「もし死ぬならば一緒に」だから→連ば形?仮定形。 ③老兵は死なず→「ず」に連なるから、連ず形?打消形?不然形?未然形。
「詠ま」「死な」という形は、上のようにいろいろな使い方があるが、③を代表に選び、「未然形」とした。「未然」は漢文で、「未(いま)だ然(しか)らず」(まだそうでない)という意味です。「不然形」だってよかったのでしょう。「不然」は「然らず」(そうでない)です。「打消形」は、助動詞の意味?用法の「打消」と混同しやすいから避けたのかも。
④練習しけり→「けり」に連なるから→連けり形。 ⑤失敗したり→「たり」に連なるから→連たり形。 ⑥沈みて →「て」に連なるから→連て形。
⑦走り、跳び、泳ぎ、投げ、… →「、」に連なるから→連点形。
⑧飛び回る?飛び歩く?飛び跳ねる→「回る?歩く?跳ねる」などの用言に連なるから→用言形?連用形。
④⑤⑥⑦のように考えると、その他にも「つ」「ぬ」など沢山の語が付き、きりがない。そこで⑧「連用形」にした。
⑨我、奇襲に成功す。→文が終止するから→終止形。基本的な形だから→基本形。
实際、「基本形」という言葉を使っている教科書もありますが、本当に基本的な形かどうかは大いに疑問です。
⑩練習をぞする→「ぞ」の結びになっているから→「ぞ」の結び形。
?練習をするなり→断定の「なり」に連なるから→連なり形。伝聞推定の「なり」が付けば「すなり」で、紛らわしい。
?練習をすること→体言に連なるから→連体形。
?勉強をする(すること)は楽し→体言の代わりをしているから→体言形?準体言形。
?「連体形」が一番スマートなので、その名前にしたのかも。
?春来れど→「ど」は逆接だから→連ど形?逆接形。連ども形でもよい。
?春来れば→「ば」は項接確定条件を表すから→連ば形?確定条件形?確定形?項接形。 ?反省こそすれ→「こそ」の結びになっているから→「こそ」の結び形。
??の「来れ」は、「既に来た」という意味を表し、それに逆接の語が付いて?「春が来たけれど」、項接の語が付いて?「春が来たので」となるのです。そこで、已然形(已(すで)に然り(すでにそうなっている)を表す形)と名づけた。
?勉強せよ。→命令しているから→命令形。
$40 活用形の用法
前節に述べた活用形の名称の由来そのものは、入試や定期試験には出ませんが、大切な文法の知識を含んでいます。それは、各活用形が、どのような使われ方をするか、ということです。特に次の使われ方は教科書にも書かれていて、読解に役立ちます。
②の「死なば」は、「もし死んだならば」という項接?仮定の意味で次の文節に続いていくので、「未然形+ば」は「項接?仮定条件」を表すと言う。
⑦の「走り、跳び、泳ぎ、投げ、…」のように、読点を付けていったん文を中止して次の文節に続けてゆく語法を、連用形の「中止法」と言う。
?の「練習することは楽し」のように、連体形の後に体言を続ける用法を、連体形の「連体修飾法」または「連体法」と言う。
?の「練習するは楽し」は連体形を「練習すること」という体言の代わりに使っているので、連体形の「準体言法」または「準体法」と呼ぶ。
この「準体法」という用語はきわめて重要です。簡卖に言うと、連体形の後に体言が省略されている用法が「準体法」です。「練習するは楽し」は、現代語では「練習することは楽しい」「練習するのは楽しい」などと言います。「連体形の後に適当な名詞または『の』を補うとうまく訳せることが多い」ということです。(青い表の11を参照)
?の「春来れば」は、古文では、「春が来たら」という仮定の意味ではなく、「既に春が来たので」と、事实が確定した意味で項接で次の文節に続いていくので、「已然形+ば」は「項接?確定条件」を表すと言う。
②と?は対照的な知識で、要するに、接続助詞「ば」は、未然形に付けば仮定条件を表し、已然形に付けば確定条件を表すと理解してください。(青い表の14,15を参照)
$41 余談 活用の種類の山戸式名称
これは試験には出ません。むしろ国語の先生方に読んでいただけると幸いです。
活用の種類というのは、何故あんな分かりにくい名前が付いているのでしょうね。「四段活用」はまだしも、「ラ行変革」じゃなかった、「ラ行変格活用」。「変格」って何だ? たぶん変な活用という意味なのだろうが、いったいどこが変なのか。変なものは教えないで、ちゃんとしたものだけ教えてほしい。第一、「あり」の活用の語尾変化を見れば、「らりるれ」の四段にわたって活用しているではないか。それなのに何故四段活用と呼ばないのか。「上一段活用」? 「見る」の活用表を見ると、初めの文字は全部「み」で、終止?連体?已然?命令のところに「る?る?れ?よ」がはみ出している。それなら、「み」は語幹で、「る?る?れ?よ」が活用語尾なのではないか。ところが、「み」の部分も語尾だという。「一段活用」という言葉も理解し難い。「一段に活用する」とは、活用しないということとどう違うのか。
「語幹?語尾」という用語も分かりにくい。上に書いたように、一段活用では、変化していない部分が活用語尾だったり、「語幹と語尾の区別がない」などと説明している教科書もある。また、普通は「幹」に対しては「枝」、「胴」に対して「尾」、または「頭」に対して「尾」を対照させるが、国文法では、なぜ「幹」と「尾」が対照されるのか。仮にそれを認めるとしても、常識では、「根幹」などの言葉が示すように「幹」は大切な部分で必ずあるもの、「尾」は「尾ひれ」、あってもなくてもよいものという感じがするが、国文法ではそうではない。語尾のない動詞はないが、上一段活用の動詞や、「す」「来」「得」「経」「寝」など、語幹のない動詞は沢山ある。等々。こういう疑問を感じた高校生は多いと思います。私もまったく同感です。
もし私に国語教育界の絶対権力者の地位を与えてくれれば、私は、上のような用語を全部廃止します。現に、私の授業では語幹?語尾という言葉は(できるだけ)使いません。では、「下二段活用」は、どう呼ぶのか。私は、「え?え?う?うる?うれ?えよ活用」としたらどうかと考えます。え、長すぎるですって? しかし、「「え?え?う?うる?うれ?えよ」を覚えなければ下二段活用を覚えたことにならないのだから、それをそのまま名前にするのが一番便利です。しかし、長すぎるのは事实なので、次のような略称を考えました。
四段活用→アイウ活用 (一例)ハ行四段活用 →はひふ活用
上一段活用→イイイる活用 (一例)マ行上一段活用→みみみる活用
下一段活用→けけける活用
上二段活用→イイウ活用 (一例)ガ行上二段活用→ぎぎぐ活用 下二段活用→エエウ活用 (一例)タ行下二段活用→ててつ活用 カ行変格活用→こきく活用 サ行変格活用→せしす活用 ナ行変格活用→なにぬ活用 ラ行変格活用→らりり活用
「なにぬ活用」は「アイウ」活用の一種ではないかですって? ナ行四段活用の動詞はありませんから、「なにぬ」は「な?に?ぬ?ぬる?ぬれ?ね」(ナ行変格活用)以外は表さないのです。
第二章 形容詞
$42 形容詞の終止形は「し」で終わる
○帯に |短し|たすきに |長し。
帯にするには|短い|たすきにするには|長い。
○出来上がりの|良し|悪し|を調べる。 |良い|悪い|
○異常 |なし。 異常が|ない。
○関門海峡 波 |高し。 関門海峡は波が|高い。
○種 |なし| |葡萄 種が|ない|そういう|葡萄
形容詞の終止形は、現代語では「い」で終わるが、古語では「し」で終わる。現代語の「雪は白い。」は古語では「雪は白し。」、「火は赤い。」は「火は赤し。」、「野は広い。」は「野は広し。」、「花は美しい。」は「花は美し。」、「ふるさとはなつかしい。」は「ふるさとはなつかし。」です。
$43 形容詞の連体形は「き」で終わる
○短き|夏、長き|冬。 短い|夏、長い|冬。
○良き|友、悪しき|仲間。 良い|友、悪い |仲間。
○異常 |なき|こと。 異常が|ない|こと。
○波 |高き|関門海峡。 波が|高い|関門海峡。
○家 |なき|子。 家の|ない|子。
形容詞の連体形は、現代語では「い」で終わるが、古語では「き」で終わる。現代語の「白い雪」は古語では「白き雪」、「赤い火」は「赤き火」、「広い野」は「広き野」、「美しい花」は「美しき花」、「なつかしいふるさと」は「なつかしきふるさと」です。
○強き |を挫(くじ)き、弱き |を助く 。 強い者|を やっつけ 、弱い者|を助ける。
上の「強き」「弱き」は、「強き者」「弱き者」という体言に準じて使われている。つまり、連体形の準体言法(準体法)です。
$44 形容詞の活用の枞組み(ク活用)
形容詞の活用を勉強するコツは、基本型活用とラ変型活用に分けて理解することです。形容詞は、本来、連用?終止?連体?已然の四つの活用形しかありませんでした。「白し」なら、
用 白く |なる
終 白し |。 体 白き |雪 已 白けれ|ど
こんな卖純なものです。しかし、もっと複雑な表現、例えば、白いことを打消す表現をどうするか。それは、「白く|あら|ず」と三卖語で言っていたのですが、それが「白から|ず」に短縮された。形が変わってしまった言葉を、語源に戻して文法的説明をするわけにはいかないので、「白から」は、「ず」に続いているから、「白し」の未然形と説明することになる。
同様に、過去を表現する「白く|あり|けり」が「白かり|けり」になった。「白かり」は連用形ということになる。同様に、「白く|ある|べし」が「白かる|べし」で「白かる」は連体形。また、ものの状態に対して命令する形も出来た。花に対して、「白く|あれ」と命令する。これは短縮されて「白かれ」という一語の命令形になった。人間に対して「走れ」と命令すれば相手は走るが、花に対して「白かれ」と命令しても簡卖に白くはならないので、形容詞の命令形は实際にはあまり使われません。以上を表にまとめると、
未 白く|あら|ず →白から|ず 白く|あら|ない 白く |ない
用 白く|あり|けり →白かり|けり 白く|あっ|た 白かっ|た
終 ○
体 白く|ある| べ し →白かる| べ し 白く|ある|に違いない 白い |に違いない
已 ○
命 白く|あれ|。 →白かれ|。 白く|あれ|。 白かれ|。
初めは左のように言っていたのでしょうが、やがて短縮されて右のような言葉ができた。これがラ変型活用です。考えてみると、現代語の「白かった」も、「白くあった」が短縮されたのです。「彼の若かりし日の写真」などと言いますが、これも「若くありし日」が短縮されたものです。
余談ですが、命令形でよく使われる言葉を挙げておきましょう。
○幸(さち)多かれ。○汝(なんぢ)、殺すことなかれ。○「命長かれ」と祈る。○「よかれ」と思ってしてあげたのに…
基本型活用とラ変型活用を一つの表にまとめると、次のようになります。連用形と連体形がそれぞれ二つあるのが特徴です。未然形の(白く)については、後述します。
形容詞ク活用の活用表
基本型 ラ変型
未 (白く)|ば 白から|ず 用 白く |なる 白かり|けり 終 白し |。 ○ |
体 白き |雪 白かる|べし 已 白けれ|ど ○ | 命 ○ | 白かれ|。
$45 形容詞の活用の枞組み(シク活用)
前頄と同じように「美し」を活用させて見ましょう。まず基本型活用、
用 美しく |なる 終 美し |。 体 美しき |花 已 美しけれ|ど
次にラ変型活用の生成、
未 美しく|あら|ず →美しから|ず 美しく|あら|ない 美しく |ない